- 行政・業界団体
26/09/03
適正原価、関係者にヒアリング開始 経済・荷主団体から懸念も
国土交通省は8月26日、適正原価設定に向けた有識者検討会を開き、関係者へのヒアリングを始めた。運送業界からは全日本トラック協会、運輸労連が意見を述べ、制度全般や原価構成で複数の要望を行った。一方、経済団体や荷主団体からは適正原価を踏まえた運賃を払うには、供給網全体で価格転嫁を進められる仕組みを構築することや、算出方法の客観性・透明性の確保を求める声が上がった。

10月の次回検討会までヒアリングを実施し、論点整理に入る
ヒアリングは、適正原価の制度設計や運用で考慮する事項を聞き取ることが目的。26日に続き、10月1日に開く検討会でも実施する。特積みや軽貨物、利用運送の業界、建設や小売り、自動車などの業界にも別途個別にヒアリングを行う。
順守義務で法的措置を求め
検討会で意見を述べた全ト協の寺岡洋一会長は今後導入される事業許可更新制で、適正原価を下回らないことが必須要件になるとし「運送企業の95%以上は中小零細。交渉力が弱く、荷主の理解協力が不可欠になる」と強調。要望内容を説明した馬渡雅敏副会長も同様の課題を指摘し、中小受託取引適正化法や物流特殊指定に適正原価の順守義務を盛り込むといった法的措置を求めた。
制度設計では、特積みは一般と異なる原価構造になっていることから、適正原価を別途設定するべきと要望。車両の大きさ、扱う品目が多種多様な実態を踏まえ、バン型と異なるさまざまな車型・車種の設定の必要性も強調した。実車率の考え方では実態を踏まえ検討することも求めた。
運輸労連の成田幸隆委員長は、適正原価を払えば十分と考える取引先の可能性を指摘し「適正運賃でないことを明確にするべき」と要望。賃金と労働時間を全産業平均にする目標達成には、地域間の賃金実態を適切に反映する必要があるとともに、現状の長時間労働を前提に残業代を積み上げる構造では不十分だと主張した。
投資内容の客観性を疑問視
一方、経済団体や荷主からは複数の項目で懸念の声が上がった。日本商工会議所は、適正原価導入による物流コスト増は広範囲に影響することを指摘した上で、供給網全体のさまざまな声を反映させることや、荷主・物流企業に十分な準備期間を与えることを要請。
加えて、改正貨物自動車運送事業法では適正原価を下回る場合に法令違反となるため、「取引を客観的・円滑に検証できる手法も必要」とした。
同様の指摘は他の団体からも上がり、全国農業協同組合中央会(JA全中)は適正原価を継続して下回らない期間について「供給網全体で価格転嫁できる環境が整っているかを加味する必要がある」と主張。農産物は季節ごとに繁閑の差が大きく運賃の負担能力が変わるため、運賃・料金の柔軟な運用を求めた。
また、両団体は適正原価の構成要素に輸送の安全確保に必要な経費や、事業継続に不可欠な投資が盛り込まれている点を疑問視。一般的に投資は創出した利益から行うものとの考えを示し、法令で義務付けられた項目以外を盛り込む場合、妥当性・客観性を踏まえて検証することを要望した。
同日のヒアリングでは全国商工会連合会、出版文化産業振興財団も意見を述べた。次回検討会では全国通運連盟、交通労連、経団連などから意見の聞き取りを行う。
執筆者:Ye-Live編集部
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