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22/11/17

【解説】センコーGHD、製造業進出の勝算は?

 センコーグループホールディングス(本社・東京、福田泰久社長)は11月15日、食品容器メーカーの中央化学への株式公開買い付け(TOB)を開始した。物流を本業に、商事や貿易、介護など多様な業務に進出しているセンコーグループにとっても、製造業への本格的な進出は新たな試み。勝算の根拠となるのは、長年ケミカル物流を担う中で蓄積した業界への知見や人脈と、本業の物流だ。
 中央化学は60年以上の歴史を持つスタンダード上場会社。11月14日に発表された2022年4〜9月期の連結業績は、売上高が前年同期比3・5%増の243億円、営業利益は同98・3%減の1400万円。増収減益だった。原材料費、電気代、物流費の高騰などが利益を圧迫している状態。

 センコーグループの福田社長は、企業価値向上への道筋として、まず物流改善を挙げた。現在物流面で、中央化学をサポートしている知見を踏まえ、「現状売上高物流費が高く、年間10億円位の圧縮ができるのではないか」(福田社長)と見積もる。各地にある中央化学のストックポイントをセンコーグループの力で集約できることなどを具体例として挙げている。
 次に挙げたのが、販売でのシナジー(相乗)効果だ。飲食店やコンビニ、スーパーマーケットなどの顧客を持つセンコーグループと、中央化学の食品容器販売は「多くの顧客が重なっている」(福田社長)。センコーの納品先に中央化学の商品の営業を行うなど、販売面での支援も行える。製造設備の更新への投資が滞っているため、センコーグループの資金調達力を生かして更新を行い、生産性向上も見込んでいる。

 センコーグループの傘下に入るが、2年は現在の親会社である三菱商事が40%の出資を維持する。取引先に三菱グループが多くいるため、安定的な親会社の移行には三菱商事の力が必要だと両社の間で合意があったためだ。また、中央化学は、22年4〜9月期は大幅な減益となっているが、販売価格の改定も終わっていて、下期以降で利益の回復が見込まれる。

 センコーグループは、スリッパや健康食品など一部で製造業を手掛けてているが本格的な参入は中央化学のTOB成立後。ただ、「祖業であるケミカル物流を通じて、業界に対する多くの知見を有している。また多くの優秀な人材との接点もある」(福田社長)。今後は、中央化学の技術力を生かして医療グッズなどへも製造の幅を広げていきたい考えだ。