• 行政・業界団体

21/04/27

自家用車の有償運送、9月にも対象を見直しへ

 国土交通省は早ければ9月にも、自家用車(白ナンバー)による有償貨物運送の対象を見直す。道路運送法に基づく繁忙期を変更した上で、営業所から近距離に限られた区域で行う宅配なども、白ナンバーで有償運送をできるようにする。運行管理は自家用車を使う許可を受けた運送企業が行い、各ドライバーに適切な指導が行われていない場合は取り消しもある。
 自家用車による貨物運送の見直しは政府の規制改革推進会議の検討を受けたもの。百貨店、インターネット通販企業などの意見を踏まえ、9月までに間に合うよう改正通達を施行する計画だ。
 道路運送法では現在、公共の福祉を確保するため、やむを得ない場合、地域や期間を限って白ナンバーでの有償貨物運送を認めている。今後は国が許可するケースとして、営業所から近距離の限られた区域内で行われる宅配などのラストワンマイル輸送を加える。

繁忙期見直し「春期」を追加

 自家用車を使用できる期間となる繁忙期についても見直す。現在は中元や歳暮の配送が集中する夏と冬などを対象としているが、改正後は新たに「春期」を追加。毎年の3月10~31日、4月20~30日、5月6~15日の間で許可する。夏期、秋期、年末も期間の範囲を見直す。
 許可に当たっては、白ナンバーを使う運送企業による申請が必要で、国は使用する台数や運送する貨物の種類と数量、運送期間などを確認。申請できる期間は1台当たり年90日まで。許可は繁忙期ごとに行うが、企業は1年ごとに一括して申請できる。有償運送を行う自家用車は許可証を、自動車の外部から見やすいように掲示する。

許可受けた企業が運行管理

 白ナンバーを活用する際には、運行前と運行後の点呼をはじめ、許可を受けた運送企業に各ドライバーの運行管理を行うことを義務付ける。仮にドライバーへの適切な指導が行われていなかった場合は許可を取り消す。過去に不適切な対応が認められる場合は原則として許可しない。
 国交省は新たな仕組みの導入から一定期間経過した後、モニタリング調査を行い、利用状況や課題を把握する考え。同省は「今回の改正は市場ニーズを踏まえたもので、さらなる自家用有償運送の拡大を見据えてはいない」とし、「貨物運送に不可欠な運行管理を行っているかなどを、モニタリング調査でしっかり確認する」としている。

◆企業側の責任は重く◆

 自家用車による有償貨物運送の見直しは、対象を宅配に広げたことがポイントとなる。国土交通省はインターネット通販業界の現状を踏まえ、営業所から近距離の限られた区域内で行うラストワンマイル輸送に限定し対応した形だ。
 貨物事業での白ナンバー活用を広げる動きは、2019年2月に行われる予定だった。だが当時は、最終的に関係者との調整が進まず、立ち消えとなった。その後、新型コロナウイルスに伴う巣ごもり需要で、宅配の環境は激変。国交省によると、20年4~12月の宅配便取扱個数は前年同期比11・6%増の36億2796万個と急増する中、自家用有償運送の拡大を求めていた日本IT団体連盟などに改めて必要性を聞き、実現の運びとなった。
 今回の見直しを機にネット通販の中には、料理宅配のウーバーイーツと同じく、荷物と個人の自家用車をマッチングさせるサービスを考えているようだ。一方で、経済団体の一部が「有償貨物運送の全面解禁に向けた一歩」と位置付けていることに対し、国交省は「全く違う」と否定する。
 国交省は運送事業の必須条件となる運行管理を厳しく見ていく方針だ。また、物損事故をはじめ運行中に起きたトラブルの保障も「民間で対策を考えること」と指摘する。仮に自家用車の徹底した安全対策が講じられない場合は、「将来的に任意保険料の引き上げにつながる可能性もゼロではない」と、トラック業界全体への影響にも警鐘を鳴らす。
 経済界の要望を実現した以上、新たな仕組みをどううまく活用するかは企業側にかかっていると言える。問題が多く発生する場合は、改めて仕組みの見直しが必要となる可能性も出てきそうだ。