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25/04/17

中野国交相、価格転嫁と賃上げ要請 自主的な取引改善求め

中野国交相(左端)が坂本会長に要請書を手渡し、取り組み推進を求めた

 中野洋昌国土交通相は4月8日、全日本トラック協会(坂本克己会長)に対し、価格転嫁と賃上げを要請した。国を挙げて賃上げを推進する中、今国会で審議中の改正下請法案の事前周知や多重下請け構造の是正など、適正取引に向けた自主的な取り組みを求めた。
 同日、坂本会長、杉山千尋副会長、馬渡雅敏副会長を国交省に招き、要請書を手渡した。中野国交相は冒頭、「物流を持続的に発展させるため、さらなる賃上げ、環境改善が必要になっている。荷主を含め、政府全体で取引環境改善に取り組むが、業界も積極的・自主的に進めてほしい」と要請した。
 具体的には、価格転嫁を推進するため、現在審議中の改正下請法案の検討内容の周知を、成立・施行前から自主的に行うことを要請。元請けが多重下請け構造を前提とした商習慣を見直し、実運送のコストを勘案した運賃・料金の収受も求めた。

収入増加も人件費は道半ば

 また、公正取引委員会と内閣官房が2023年11月に公表した、労務費の適切な転嫁に向けた価格交渉の指針を基に、必要なコスト収受を推進することも明記。中野国交相は「少なくとも運賃収入が上昇した分は、ドライバーの給与引き上げにつながる」とした。要請を受け、坂本会長は「トラックはガス、水道などと同じく社会的な意義がある仕事。コストは社会で負担する必要があり、新たな気持ちで取り組んでいく」とした。
 国交省が19年度と23年度の事業損益明細書を分析したところ、業界では増加した運送収入が人件費に十分回っておらず、賃上げ率も全産業平均を常に下回る状況が続いている。石破茂首相は3月14日に開催されたドライバーも交えた車座で、業界経営者に対し「果敢な価格交渉と確実な賃上げ」を求めていた。