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25/01/14
遠隔点呼、企業間で受委託可能に 来年度にも新制度導入
国土交通省は来年度にも、新たな点呼制度を導入する。遠隔点呼を行える幅を広げ、必要な要件を満たせば、異なる企業間でIT機器を使った点呼を受委託できるようにする。人の代わりにロボットなどが点呼を行う「自動点呼」についても、業務前の導入を本格化する計画で、ドライバーと運行管理者の負担を軽減しつつ、点呼を確実に行える環境を整備する。
遠隔点呼は、Gマーク(安全性優良事業所)取得企業などの「優良事業者」に認めていたIT点呼を、それ以外にも広げる制度。使用する機器など国の定める要件を満たすことが条件で、同じ企業の営業所間の他、完全子会社の営業所間であれば運用を認めていた。
国交省は2013年から、資本関係のない企業間で点呼を行う「受委託点呼」を導入している。一方、実施にはGマークを取得したり、対面点呼を行うなどの要件があった。新たな制度は遠隔点呼を行える枠を広げ、異なる企業間でもIT機器を使った点呼を受委託できるように見直す。
23年度以降、国交省は貨物・旅客で企業間遠隔点呼を試験的に開始。先行実施要領に加え、遠隔点呼を行う運行管理者と、点呼を受けるドライバーの所属営業所間で、常時連絡可能な体制を整えるなどの細かな要件を定め、昨年11月末までに1万3000回以上実施してきた。企業からは安全性や労働生産性の向上で効果が確認できたとの声があったという。
現在も企業間遠隔点呼の先行実施を続けており、大きなトラブルもないことから、国交省は内容を確認し現段階の要件が適切かを検証。今年春ごろの制度化に向け、要件と運用上の順守事項をまとめる。
業務前自動点呼も本格開始
また来年度は、業務前自動点呼の本格的な導入も開始する。同点呼は運行管理者に代わり点呼支援機器が必要事項の確認や指示を代替する制度。国の定める要件と機器を使用することを条件とし、22年末から業務後に限り実施を認めている。
一方、業務前は企業からの需要が高い半面、業務後より厳しい安全管理が必要なため、23年度から実証実験を開始。昨年度はより多くの企業が先行実施できるように要領を発出し、貨物・旅客の144社が申請した。このうちの大半が貨物で、北海道や九州を中心に申請企業が増加している。
業務前自動点呼の効果として、運行管理者からは点呼の質や業務効率の向上が挙がる半面、対面点呼で確認できたドライバーの微妙な変化が見えづらくなったとの声があった。ドライバーからは健康意識が向上したが、血圧測定で点呼時間が延びたとの指摘があった。
国交省は検証に必要なデータを十分に取得できたことや、企業から早期制度化のニーズが高いことから、企業間遠隔点呼と同様に今年春の制度化を目指す方針。可能な限り早く要件や運用上の順守事項をまとめる。