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24/09/17

【MEDIA TIMES×輸送経済コラボ企画①】松岡 弘晃フジトランスポート社長インタビュー

【長距離輸送を軸に、徹底したローコスト経営】

 全国ネットワークと約3000台の自社車両で、国内の長距離幹線輸送で存在感を示すフジトランスポート(本社・奈良市、松岡弘晃社長)。2035年にはグループで大型トラック5000台保有、拠点200カ所、売上高1000億円を目指している。松岡社長は成長の土台に「全社員が目指すべき方向性を共有するとともに、顧客との交渉力強化」と話す。

まつおか・ひろあき=1969年11月14日生まれ、54歳。奈良県出身。2013年英国立ウェールズ大経営大院卒(MBA取得)。1989年奈良三菱ふそう自動車(現・三菱ふそうトラック・バス)入社、96年富士運輸(現・フジトランスポート)入社、専務、2001年社長。

 ――4年後の2028年には設立50年を迎える。

 松岡 1978年に父で創業者の松岡日出夫が2トントラック5台で開業し、大手運送事業者より奈良県内の集配業務を受託したのが始まり。社長交代をした2001年を契機に、全国展開を目指した。並行してM&Aも進め、年商は100倍以上になった。現在、車両台数は約2850台に達し、24年内には3000台を超える予定だ。今月開設した諏訪支店(長野県諏訪市)で、グループの拠点数は130カ所になった。

奈良市に構える本社は2017年に完成

 ――なぜ全国展開だったのか。

 松岡 奈良県内だけでの事業は早くから限界を感じていた。規模やネットワークを構築するビジネスモデルを実現するため、まず主要な都市と空港に拠点を構えた。その後、工業団地が集中するエリアへの進出と同時に、事業が軌道に乗っていった。ビジネススキームは、大型トラックで長距離をメインとするセグメントのみを伸ばすというシンプルさで安定的な成長を実現した。

 ――成長の原動力とは。

 松岡 原動力は大きく分けて2点ある。1点目は、事業拡大の意図や今後の戦略などグループビジョンを全従業員に明確に説明すること。従業員の理解を得ることは大きな強みとなっている。2点目は、適正運賃の根拠を示す仕組みを作り、荷主に交渉すること。特に、当社は荷台の長さが10メートルの大型トラックを主力車両としている。通常の車両より荷台が40センチメートル長く、T11型パレットの積載が2枚増えることで、9台分の貨物を8台で対応できるといった「運び方改革」を提案している。顧客のコスト抑制などで受注は徐々に増加している。

 ――コスト増加を見据えた先手が目立つ。

 松岡 グループで全国ネットという強みと車両整備工場、自家給油所設置など内製化によるローコスト経営の実現し、業界の中で競争優位性があると感じている。例えば自家給油所は20年以上前から設置し現在、全国45カ所に整備している。タンクローリー単位の購入により燃料費は同業他社と比べ3~5%抑えられている。また給与体系は労働時間、業務内容を反映した手当てを軸にしている。支給水準に満足している乗務員は多く、退職者が減っている。今後も乗務員に適正な手当てを支給できるよう、業界の動向を考慮しながら荷主との交渉と乗務員への手当て増額を検討していく。

 ――業界の行方をどう占う。

 松岡 大きく変わることはないと感じている。法律を守ることができない中小零細の運送会社は、今後も法律を守らずに労働時間の改ざんや労働記録を削除し続けるのではないか。

 ――座右の銘は。

 松岡 楽すれば、楽が邪魔して楽ならず、楽せぬ楽が、はるか楽々――富山の薬売りの言葉を最も大切にしている。現在も楽せずに、厳しい道を選ぶようにしている。

2024年内にも保有台数が3000台を超える見込み