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24/03/11

中企庁取引課・川森敬太課長補佐、運送業の価格転嫁へ「受注企業まず交渉を」

 春闘交渉がスタートし、物価上昇対策も含めた賃上げが重要となる中、1日、価格交渉促進月間が始まった。中小企業の適切な価格転嫁に向けた環境づくりに取り組む中小企業庁事業環境部取引課の川森敬太課長補佐は「受注企業はまずは交渉してほしい。発注企業は、受注企業が物を言い出しやすい環境をつくってほしい」とし、トラック運送企業の価格転嫁前進へエールを送る。

 ――企業の賃上げが期待される中、価格交渉促進月間を迎えた。
 川森 中小企業庁では毎年、3月と9月を価格交渉促進月間に設定し、企業に取り組みを促している。昨年9月調査では、発注企業からの申し入れで交渉が行われた割合が14・3%と前回3月調査からほぼ倍増し、全体に交渉しやすい雰囲気はできてきた。
 ――実際の価格転嫁の状況はどうか。
 川森 コスト全体の転嫁率は45・7%。仮にコスト上昇が100円とすると、54・3円を受注側が負担している状況で、転嫁は追い付いていない。前回調査時から横ばいで、発注企業側で原資がない状況も少なくないと認識している。企業間取引で発注側・受注側に分けた時、より体力がある発注側でサプライチェーン維持のためにしっかりと配慮してほしいと要請している。そこから賃上げ、購買力上昇、物価上昇という流れができてくると、より価格転嫁が前に進む。粘り強く取り組む必要があると実感している。

値上げ根拠は公表資料基に

 ――トラック運送業の状況は芳しくない。
 川森 昨年9月調査で、転嫁率は24・2%と27業種中27番目。一方で、前回調査の19・4%からは改善が見られる。転嫁率の低い業種では労務費の割合が高いことに加え、多重下請け構造や個人事業主が多いなど、交渉で立場の弱い事業者が多い傾向がある。
 ――労務費の適切な転嫁に向けて。
 川森 労務費の適切な転嫁のための価格交渉の指針を内閣官房と公正取引委員会が連名で公表している。指針では一般的な公表資料、例えば「春闘での業界の賃上げ率や最低賃金の上昇率がこのくらいなので当社もこのくらい上げてほしい」といった交渉のやり方を尊重し、発注側で対応が難しい場合はなぜ難しいかを合理的に示してほしいという趣旨のことが書いてある。指針を使ってもらうための呼び掛けを、中小企業庁を含め今一生懸命行っている。受注企業はまずは転嫁交渉をしてほしい。発注企業は、受注企業が積極的に物を言い出しやすい環境をつくってほしい。
 ――長年、値上げ交渉の経験がない運送企業も。
 川森 事情はどの業種も同じ。地域の商工会議所や中小企業の経営相談窓口「よろず支援拠点」などに相談もし、能動的に行動することが第一歩になる。