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23/12/26

消費者庁・送料無料表示、通販に「表現見直し」要請で対応し禁止に踏み込まず

 消費者庁は12月19日、通販の「送料無料」表示に関し、通販会社が表示を継続する場合は理由の付記を、見直す場合は送料当社負担などと表示するよう、関係業界団体に要請した。物流業界は表示の禁止を求めてきたが、通販会社が消費者からどのくらい送料を転嫁できているかを把握できず、集荷から消費者に届けるまでの配送実費の計算が困難なことから表記を残すこととなった。

 要請したのは、アマゾンジャパンが加盟するアジアインターネット日本連盟、メルカリが加盟する新経済連盟、LINEヤフーなどで構成するセーファーインターネット協会、中小通販を中心とする日本通信販売協会の4団体。各会員の取り組み状況を見て、通販を行う小売店が加盟する団体への通知も検討する。
 通販会社が送料無料表示を継続する場合、その理由や仕組みを分かりやすく表示することを求めた。理由では、キャンペーン中なので無料にできている説明や、負担者名を付記することを促した。仕組みでは、宅配会社との契約に基づき、適正運賃を払っていることなどを記載してもらう。文字のサイズや色、字体、記載場所は指定しなかった。
 見直す場合は、「送料当社負担」「〇〇円(送料込み)」などで表示することを求めた。要請した団体には大手通販会社が加盟しており、「そういったところに登録し、通販を展開する業者や個人が多いとみている。大手通販会社が協力してくれれば、取り組み拡大を期待できる」と古川剛消費者制度課長。消費者庁は取り組み状況を注視するが、具体的な方法は検討するとした。

消費者団体の意見を踏まえ

 送料無料表示の検討に向け、消費者庁は6月から、物流、通販、消費者の各業界団体と意見交換会を実施。消費者団体から、送料として商品価格以外の追加負担を求めない表示をする場合、消費者が誤解しないよう、その内容に関わる説明を行う責任があるとの声が出ており、今回この意見を踏まえて見直した。
 一方、全日本トラック協会、労働組合といった物流側は表記の禁止を求めていたが、実現しなかった。政府は6月にまとめた政策パッケージで、運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁されるべきとの観点から、表示を見直す方針が示されていた。消費者庁はこれまでの意見交換会で、通販団体などから話を聞いたが、各通販会社が消費者からどのくらい送料を転嫁できているのかの実態を把握できなかった。

物流求めた法規制にならず

 また通販団体は、例えば、消費者が複数の商品をまとめて注文する場合、どの拠点から商品が届くかや、注文者に何回配達するかが分からない点を指摘。消費者の注文時、通販会社が配送実費を計算することが難しく、どのくらい送料を収受すればいいかは、注文したケースによって異なるといった声があり、送料無料表示を残すこととした。
 加えて、「一定の消費者から支持があり、苦情も出ていなかった」(古川消費者制度課長)ため、労組が求めた法規制は見送ることとした。消費者に誤解を与えないような説明の付記は要請で、仮に通販側が従わなくても行政処分や罰則はない。