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23/12/11

中企庁調査、運送の価格転嫁は全業種で最下位続く

 トラック運送の価格転嫁で、依然として課題を残すことが中小企業庁の調査で分かった。価格交渉の状況を業種別にランキングでまとめたところ、トラック運送は交渉を行ったものの、転嫁を認められた割合が最も低い業種だった。さらなる価格転嫁を推進するため、中企庁は公正取引委員会などと連携し、対策を推進していく方針だ。
 調査は、毎年3月と9月の価格交渉促進月間の成果を確認するために実施しているもの。今回、10~11月に行い、調査票を送った全国30万社の中小企業のうち、3万5175社が回答した。
 中企庁の基準を基に、価格交渉の状況を順位付けした結果、トラック運送は全27業種中22位となり、3月の前回調査より4段階上昇した。一方で、コスト増加分のうち、価格転嫁できた割合を転嫁率として集計したところ、トラック運送は24・1%。エネルギー費、労務費の転嫁が進み、前回調査より4・7ポイント上昇したが、順位はこれまでと同じく再開だった。
 また、交渉は行われたが、全く転嫁できなかった企業の割合でも、トラック運送は29・2%で最下位に。全体平均の11・4%より17・8ポイント悪く、改めて価格転嫁の課題が浮き彫りとなった。トラック運送以外では、通信(23・9%)、放送コンテンツ(25・0%)なども価格転嫁が進んでおらず、中企庁はコストに占める労務費の割合の高さや、業界での多重下請け構造、個人事業主の多さが原因にあるのではないかとみている。

労務費の収受で指針を公表

 価格転嫁を促進し、中小の賃上げ原資を確保するため、国はさらなる対策を講じる方針だ。公取委と内閣官房は11月29日、労務費の適切な転嫁に向けた価格交渉の指針を公表。発注者と受注者がそれぞれ取るべき行動を示した。
 例えば、発注者の場合は、取引価格に労務費上昇分の転嫁を受け入れる方針を経営トップまで上げて決めることや、受注者から取引価格の引き上げを求められていなくても、定期的に半年や1年に1回協議の場を設けることを明記。サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を行えるよう、受注者はその先の取引相手とも、取引価格を適正化すべき立場にいることを意識し、要求額の妥当性を判断することも求めた。
 受注者には相談窓口の活用や根拠となる資料の提出の他、受注者の交渉力が比較的優位なタイミングを活用して行うことを挙げた。発注者から価格を提示されるのを待たず、自ら希望する額を提示することも記載した。
 この他、中企庁は来年1月にも、発注企業ごとの交渉・転嫁の状況の評価をまとめたリストを公表する考え。併せて、評価が芳しくない発注企業の経営者トップに、所管大臣名での指導・助言も行っていく。