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23/05/23

国交省、軽貨物事故防止で新たな安全対策検討

 貨物軽自動車運送の事故を防ぐため、国土交通省は新たな安全対策を検討する。軽貨物を手掛ける企業や個人事業主に対し、安全に不可欠なルールを周知・教育する仕組みを作る。輸送力への影響を考慮しつつ、運行管理制度の見直しも視野に入れ、年度内にも一定の方向性を示したい考えだ。
 5月16日開催の適正化協議会で、今後の安全対策の方向性を示した。近年の交通事故分析や、国交省が3月に行った貨物軽自動車運送事業の実態調査の結果を踏まえ、安全に関わるルールの周知・教育と、既存制度の変更に分けて検討する。
 現行ルールの周知では、軽貨物を手掛ける企業や個人事業主向けの指導・監督マニュアルを作成する。運行管理が徹底されていないケースが見られるためで、国交省が首都圏と近畿圏の個人事業主に行った調査によると、回答した772者のうち、全年齢層の25%が運行管理を「実施していない」と回答。39%は拘束時間、休息期間などを「順守していない」と答えた。
 国交省は年度内にも、運行の安全を確保するための順守事項、貨物の正しい積載方法などをまとめた軽貨物用のマニュアルを作り、ルールの周知を図る。運行管理者講習の受講やドライバーの適性診断の受診を推奨するとともに、運行管理セミナーも開催する。
 教育では、eラーニングシステム構築も検討する。軽貨物自動車の事故分析の結果、特に20代の若いドライバーの事故が多いことから、20代を念頭に置きつつ、各年代のドライバーが時間や場所に関係なく、安全知識を習得可能な環境の整備を目指す。「まだイメージの段階だが、安全意識の向上につながる対策を検討したい」(国交省)。
 また運行管理を確実に行わせるため、既存制度の見直しが可能かも検討テーマとなる。貨物軽自動車運送事業は一般貨物運送と異なり、運行管理者の選任や事故報告、乗務記録は義務付けられておらず、安全対策で大きな差がある。
 一方、軽貨物需要が高まる中、制度を厳しくすると輸送力が確保できなくなる可能性も想定されるため、「業界の実態を考慮しながら、(義務付けが可能かどうかを)検討していく」(同)。
 堀内丈太郎自動車局長は同日の協議会で、「個人事業主は運行管理を1人で行わなければならず、ルールの順守が難しい状況にある」とし、国交省として、安全確保と働き方改革をどう実現できるかを考える必要があるとの考えを示した。

協議会は、軽貨物に業務を委託する荷主、元請けなどで構成されている