• 統計・データ

23/04/05

九州、CBREが「製造業の集積が物流施設需要をけん引」と分析

 九州では、半導体受託製造会社大手の台湾積体電路製造(TSMC)が2024年までに、熊本県菊陽町の新工場を稼働する。これに連動し、多くの半導体関連企業が続々と周辺エリアに工場・倉庫・サービス拠点を新設・増設。製造業の集積が、コロナ禍のEC(電子商取引)拡大に並ぶ潮流として、国内の物流施設需要をけん引している。CBREが分析した。
 工場・倉庫・サービス拠点の増加で保管需要が高まるほか、建設やインフラ整備にかかる資材倉庫などの需要も発生。今回のTSMC熊本工場のケースでも、すでに熊本~福岡エリアで需要が顕在化している。福岡圏では、大型マルチテナント型物流施設の賃貸ニーズがここ数年で急速に拡大。2022年の1年間のテナント需要について、面積ベースで荷物の種類別にみると、電子・機械製品を扱う面積は前年比2倍超。福岡圏全体の倉庫面積の18%を占め、食品・日用品・ECと並ぶ規模だった=グラフ

 また、近年は長距離輸送を避ける目的で、九州に拠点を構える物流企業が増加。既存倉庫の老朽化が進み、効率的な運営ができる新たな物流センター・倉庫の需要も増えている。最小限の在庫に抑えるのではなく、不測の事態に備えた保管倉庫を求める企業も多い。さらには、工場周辺の人口集積で消費財の保管需要増加も見込まれる。
 スマートフォン・パソコンの普及、自動車の電動化、5Gの普及とIoT(モノのインターネット化)・自動化の進展で、半導体市場は世界的に拡大し続けている。一方、米中摩擦やサプライチェーンの混乱、ウクライナ戦争などの国際情勢を背景に、国内では製造業の自国回帰の動きが進む。
 政府は、TSMCがソニーグループやデンソーらとともに進める今回の熊本工場建設をはじめ、国内半導体メーカーキオクシアの三重県四日市市の工場、アメリカの半導体大手マイクロンテクノロジーの広島工場、国内大手企業8社の半導体新会社ラピダスの北海道千歳市の工場建設に、それぞれ巨額の補助金を投入。日本の半導体産業の復活・振興を後押しする。
 CBREは今後の見通しについて「様々な産業で、日本企業の生産の国内回帰が進む。ほかの産業や地域でも産業再活性化が進み、新たな物流施設需要を生む」とみている。