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23/01/23

国交省、完全自動運転活用見据え運行従事者の大枠固める

 将来的に運送事業で自動運転の活用が本格化するのを見据え、国土交通省は運転操作以外の業務を担う「自動運行従事者」(仮称)を新設する。4月の改正道路交通法の施行に合わせたもので、省令改正などを行い、自動運行従事者に求める要件の大枠を定める。
 改正道路交通法では、特定条件下で完全自動運転ができる自動運転「レベル4」の公道走行許可が盛り込まれる。一方、自動運転車を使う場合も、運送企業はこれまでと変わらず輸送の安全確保が求められるため、ドライバーが不在の自動運転車で事業を行う場合、運行前の日常点検、点呼報告など運転操作以外の業務をどうするかが焦点の一つだった。
 新たな制度に合わせ、国交省は運転操作以外の業務を担う人を自動運行従事者と法令で位置付け、運送企業の責任の下、運行管理者から業務内容の指示を受ける仕組みを構築する。昨年12月開催の検討会で要件が提示され、特定自動運転車は運転操作を行わないことから、ドライバーへの酒気帯び確認や自動運転免許の保持は求めない方向で調整する。特定自動運行が終了するなど、運転操作が必要な場合は従来のドライバーと同じ要件を求めていく。

貨物の積載方法なども設定

 また運転操作以外の業務を確実に実施できるよう、自動運行従事者の確保は求める半面、一律の数は定めない方針。トラブルが複数発生して同時に対応できない場合、全ての自動運転車を停止させる。例えば、ある自動運行従事者は日常点検を、別の自動運行従事者はそれ以外の業務を行うなど、1台の自動運転車を複数の自動運行従事者で扱うことも可能にする。
 この他、トラック運送は、貨物の積載が安全に大きな影響を与えることから、自動運行従事者には偏荷重が生じない積載や貨物へのロープ、シート掛けを求めていく。運行中の荷崩れに対応できるよう、自動運転車にカメラやセンサーを取り付け、遠隔から積み荷の状況を確認できるようにすることも要件とする。
 特定条件下での完全自動運転は実用化まで時間があることから、今回は自動運行従事者の大枠の要件を定める。技術の進展を踏まえつつ、資格、対象年齢など、今後必要に応じて細かな要件を検討していく。国交省は1月をめどに報告書をまとめ、改正道交法の施行に合わせ省令を改正する。