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23/01/16

公取委、優越的地位の乱用で物流5社含む13社公表

 公正取引委員会は昨年12月27日、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査の結果、労務費、原材料価格、エネルギーコストの上昇分に関し価格転嫁の円滑な推進を後押しするため、13社の社名を公表した。
 13社は公表順に、佐川急便、三協立山、全国農業協同組合連合会、大和物流、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクス。5社が物流企業だった。
 公取委の社名公表は、労務費、原材料価格、エネルギーコストなどコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格交渉の場で明示的に協議することなく、従来通りに価格を据え置く行為が多数の取引先で確認された企業が対象。13社は、受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず取引価格が据え置かれ、事業活動に影響が大きい発注者として、受注者から多く名前が挙がった。
 一方、公取委は、独禁法・下請法違反や、違反の恐れを認定したものではないとした。併せて、受注者がコスト上昇分の値上げを求めたのに、理由を書面やメールで回答せず価格を据え置いた行為が認められたケースも含め、4030社に具体的懸念事項を明示した注意喚起書を送付した。
 調査は、コスト上昇の中、中小零細企業の賃上げにつなげるため2021年12月に政府が公表した「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」の取り組みの一環。コスト上昇分を取引価格に反映せず、価格を据え置いたことが疑われる事案に関して実態把握のため昨年6月以降、緊急に行った。

 発注者で荷主への転嫁不足

 昨年7~12月には受注者8万社、発注者3万社の書面調査を踏まえ306件の立ち入り調査を、また過去の下請法違反歴の有無も踏まえ21年9月からの1年間の取引を対象にした詳細な個別調査も実施。306件の立ち入り調査では、問題につながる恐れのある事例として、トラック関連では発注者が同業者のケースも複数挙がった=表。

 調査では、受注者から申し入れがないこと、期限を定めた取引価格の有効期間内であること、要請があった受注者からの協議に対応し要請がない受注者への対応が間に合っていないことなどを理由として、発注者が積極的な協議の場を設けておらず、調査対象期間で取引価格が据え置かれているケースが多数あった。
 公取委は、道路貨物運送業は、発注者の立場で価格転嫁を受け入れるほどには受注者の立場で価格転嫁できていない業種とみることができるとした。今回の発注者への調査は、受注者への書面調査で挙がった企業が対象で、他にも該当行為を行っていた企業があり得るとして、積極的に情報収集し、対象企業に対しては社名公表を伴う命令、警告、勧告など、これまで以上に厳正な執行を行う考え。