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22/07/12

解説・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

投資家の評価基準が変化

 この数年、物流企業が「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に相次ぎ賛同している。なぜ各社は気候変動リスクを織り込んだ情報開示を進めるのか。背景や開示項目などのポイントをまとめた。

 Q、賛同が広がるTCFDはどんなもの?
 A、主要な国・地域の中央銀行、金融監督当局などでつくる金融安定理事会が2015年に設立した国際的な枠組み。企業に気候変動リスクと事業機会を明示し、財務に与える影響をIR(投資家向け広報)情報で開示することを推奨している。

 Q、なぜ気候変動リスクを示す必要があるの?
 A、機関投資家や金融機関による企業評価の基準が変化したことが大きい。従来は財務リスク中心だったが、地球温暖化による問題が顕在化する中、気候変動が進んだ世界で安定的な業績を上げられるのか、配当を出せるかといったことも見るようになった。これを考慮する上で、企業のリスク管理の開示を求める流れが強まり、TCFDにつながっている。

 Q、日本でも名称を聞く機会が増えたね。
 A、東京証券取引所はプライム市場上場企業にTCFD、もしくは同等の国際的枠組みに基づく気候変動リスクの開示を求めている。東証で実質最上位のプライム市場が意識しているのは海外投資家。投資家が求める気候変動リスクやリスク管理の情報開示は不可欠で、上場企業は対応する必要がある。

 Q、TCFDに賛同する企業は多いの?
 A、TCFDコンソーシアム(共同事業体)によると、6月24日時点で賛同を表明したのは650団体。物流業界では今年に入り、NIPPON EXPRESSホールディングスやセイノーホールディングス、大手倉庫会社などが賛同を表明している。

◆4項目の開示を推奨

 Q、TCFDではどんな情報を開示するの?
 A、ガバナンス(企業統治)、戦略、リスク管理、指標と目標の4項目で開示することが推奨されている。具体的には、どんな体制で気候変動リスクを分析して経営に反映するかや、短期・中期・長期に分けて経営への影響とそれをどう考えているかを示すことが必要になる。リスクをどのように特定・評価し、低減しようとしているかや、どんな指標でリスクと事業機会の評価を判断して目標の進ちょくを測るかも示す。

 Q、難しそうだね。
 A、かなり簡単な例を挙げると、農産物を生産する企業の場合、このまま気温上昇が続くと、特定の作物が取れなくなるなど、どんなリスクが起こるかを考えていく。また石炭採掘を行う企業の場合では、仮に海外の環境規制強化で掘ることができなくなった際、どのくらい企業の資産価値が減損するかといったシナリオを描く。

 Q、毎年内容を見直す必要はあるの?
 A、自社の事業内容や規制の変更でリスクの考え方が変わった場合に見直す必要がある。大きな変化がなかったり、事業内容の変化に伴う評価結果が変わらなかったりする場合も毎年報告することは求められる。