- 行政・業界団体
22/05/31
公取委、荷主641社に独禁法違反の恐れで注意喚起
公正取引委員会が荷主と物流企業の取引状況を調査した結果、代金の支払い遅延などの独占禁止法の問題につながる恐れがあるとして、641社に注意喚起文書を送付していたことが分かった。このうち、19社は文書送付前に立ち入り調査を行っており、公取委は「関係省庁、関係団体を通じて周知徹底を図るとともに、違反行為に厳正に対処する」としている。
調査は荷主と物流企業の取引公正化を目的に毎年実施しているもの。書面で調査を行い、荷主3万社には昨年10月、物流企業4万社には今年1月に調査票を送付した。荷主は2020年9月~21年8月を、物流企業は21年1~12月を調査対象期間とした。
注意喚起文書を送付した荷主のうち、最も多かったのは「製造業」で全体の43・7%を占めた。「卸売業・小売業」は34・3%、協同組合や総合工事業などの「その他」は22・0%で、「業種別では例年の調査と大きな変化はなかった」(公取委)。
問題行為の類型別では、下請けに責任がないのに給付内容を変更させたり、受領後に給付をやり直させたりする行為が全体の47・6%を占め、最も多かった。代金の支払い遅延(21・8%)、代金の減額(12・5%)も割合が高かった。
コスト転嫁拒否で19社調査
また書面調査の結果を踏まえ、公取委は労務費や原材料費、エネルギーコスト上昇分の転嫁拒否が疑われる19社に立ち入り調査を実施。独禁法の問題につながる恐れがあるとして、懸念事項を明示した文書を送った。注意喚起文書は行政指導ではないため、荷主に改善報告書などの提出は求めない。公取委は今後、関係省庁、関係団体を通じて再発防止の周知・啓発を進めていく考えだ。
調査結果では具体的な事例も公表しており、ある食品製造業は物流企業を10時間以上待機させたにもかかわらず、待機料金を払わなかった。他にも、毎月の代金で千円単位の端数があった場合に切り捨てて払っていた総合工事業や、物流企業から運賃値上げを求められた際、取引先変更の可能性があることを伝えて応じなかった窯(よう)業・土石製品製造業などのケースが例示された。