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22/05/24

厚労省、独自の荷主対策実施へ取引配慮で協力・要請

 荷主と運送企業の取引改善に向け、厚生労働省は独自の対策を行う方向で検討を始めた。運送企業の労働時間改善に配慮のない発・着荷主に「労働時間等設定改善法」を通じ、協力・要請の取り組みを強化することを想定している。現在検討中の改善基準告示の見直し議論では、使用者代表から荷主対策を求める意見があり、対応に乗り出す方針だ。
 5月19日に開かれたトラックの改善基準告示を検討する作業部会で、厚労省が荷主対策の考え方を示した。新たな改善基準告示の施行に向けて準備する考えで、次回会合で具体的な内容を示す。
 作業部会の使用者代表の強い要請を踏まえ、厚労省が独自の対策に乗り出す。昨年4月から始まった議論では、ドライバーの労働環境改善に非協力的な荷主がいる問題を指摘し、運送企業が新たな改善基準告示を順守するには、国としても荷主対策を強化するよう繰り返し求めていた。
 同日の会合でも「改善基準告示を厳しくするのであれば、商慣習が変わる施策を求めたい。荷主は自分たちを守るが、運送企業には週6日働けという業界。商習慣が変わるまでの過程で、(改善基準の)違反状態になるのは避けたい」との意見が上がっていた。

使用者側も方針を歓迎

 厚労省が対策として検討する労働時間等設定改善法は、労働時間短縮や多様な働き方に対応するため、企業に自主的な取り組みを促進する法律。法律には事業主の責務として、短納期の発注、発注内容の頻繁な変更を行わないなど、取引上の配慮促進について記載している。
 一方で、取引上の配慮は努力義務のため、労働基準監督官は直接荷主に監督・指導する権限を持っておらず、企業に協力・要請する形となる。厚労省は運送企業からの情報収集方法などとともに、荷主に監督・指導できるように法律の見直しを含め、「包括的に検討していく」(労働基準局監督課)としている。
 厚労省の方針を受け、作業部会の使用者側からも「(新たな改善基準告示を決めても)実態としてできないのであれば、絵に描いた餅。ドライバーの労働時間に対する荷主の意識も低い。優越的地位の乱用のような大なたではなく、小さなことでも変わるきっかけがあればいい」とし、対応に期待を示した。