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22/05/10

国、昇降設備・保護帽の義務付けを2t以上5t未満の車に拡大を検討

 トラックからの積み降ろし作業を安全に行うための昇降設備に関し、厚生労働省は装着の義務付け対象を広げる方向で検討に入った。昇降設備の定義などをまとめた後、最大積載量5トン以上とする対象を「2トン以上5トン未満」に見直す考えだ。荷役作業時の保護帽(ヘルメット)の着用も対象を広げる方針で、労災で特に多い墜落・転落事故の防止を図る。
 4月28日開催の荷役労働災害の防止策を話し合う検討会で方針を示した。同検討会で詳細を詰めた後、労働安全衛生規則の改正に着手する。
 労働安全衛生規則では最大積載量5トン以上で荷物を積み降ろす際、昇降設備の設置を義務付けている。一方で、規則には「荷を積み卸す作業を行う場合は、床面と荷の上面との間を安全に昇降するための昇降設備を設けなければならない」としており、具体的な設備の内容が曖昧だった。
 厚労省によると、2021年に荷役作業中にトラックからの墜落・転落が原因の死亡災害は10件。このうち、4件は2トン以上5トン未満の車だった。事故の際に保護帽が脱落していた2件を含め、4件とも頭部の損傷が死亡につながっており、同省も対策が必要と判断している。
 このため、同省は今後の有識者検討会で、昇降設備の具体的な定義や、より安全な設備の在り方などを話し合った上で、装着の義務付け対象を2トン以上5トン未満に拡大できないかを検討する。

適用除外の話し合いも継続

 墜落・転落による労災の防止に向けては、保護帽の着用義務付け対象も拡大する考え。具体的には昇降設備と同じく、最大積載量5トン以上の対象を2トン以上5トン未満に広げる方向で検討していく。
 保護帽の着用に関し、陸上貨物運送事業労働災害防止協会が今年3月、運送各社に行った調査によると、最大積載量2トン以上4・5トン未満の車両では、回答した122事業所の8割が、ドライバーに保護帽を着用させていた。一方、約1割は未着用で、約半数が法令で義務付けられていないことを理由に上げた。
 ドライバーに行った調査では、回答した320人のうち、約5割が「着用していない」と回答。未着用のドライバーの約6割は社内規定がないことを理由とした。
 昇降設備の設置義務化を前提とし、保護帽着用の適用除外についても検討する方針。具体的にはトラックの昇降設備が利用できない場所で荷役を行わない場合や、荷台の高さが約1メートル以下で、適切な墜落・転落防止措置を講じている場合などで、着用しなくても安全を維持できるかを検討する。
 4月28日の検討会でも、有識者委員から「1メートル以下なら安全なのか」「準備や片付けなど、荷役作業以外で荷台に上る際の対応をどう考えるか」といった意見が上がっており、厚労省は慎重に判断していく考えだ。