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21/12/14

国交省、IT点呼拡大で要件案

 IT点呼の拡大に向け、国土交通省は実施要領案をまとめた。現在、一部に認めるIT点呼の対象を全企業に広げるため、使用機器やシステム、実施場所などの条件を細かく定め、厳しい要件を設けることがポイントとなる。年内にも関連通達を発出し、来年度の早い段階で新制度を開始する
 IT点呼の対象拡大は運行管理の高度化を目指す施策の一環。ICT(情報通信技術)機器が市販される中、Gマーク(安全性優良事業所)取得企業、大事故、行政処分などがない優良企業以外にも対象を広げ、運行管理者やドライバーの負担を軽減しつつ、確実に正しい点呼を行ってもらう環境を整える。
 要領案は、IT点呼を認める上で厳しい要件を設定することがポイント。現在は運行管理者とドライバーがコミュニケーションを取れることが前提で、細かな要件は設定されていない。今後の新制度は対象を広げるため、機器・システム、点呼を行う施設と環境、運用上の順守事項などで細かな要件を設け、全て守ることを条件とする。

なりすまし防止も盛り込む

 機器・システムでは、運行管理者がカメラとモニターで、ドライバーの顔の表情、全身、酒気帯びの有無、疾病といった状況を常に明確に確認できることを要件に設定。IT点呼で使うドライバー用のカメラ、運行管理者用のモニターの解像度なども定める。事前登録した運行管理者、ドライバー以外がIT点呼を行えないよう、確実に個人識別が可能な機能も求める。
 また日常の健康状態や労務時間、適正診断の結果など9項目の情報を、IT点呼を行う営業所間で共有し、運行管理者が確認できるようにすることも要件。ドライバーの疾病、疲労、睡眠不足の状況を平時と比較して確認できる体制を整えることも必要とする。
 IT点呼を行う施設・環境要件に関しては、運行管理者がドライバーの状況を明確に確認できる照度を確保したり、通信が途切れないように必要な環境を備えたりすることを規定。ドライバーの全身やアルコール検知器の使用状況を確認するため、点呼を行う場所の天井などに映像を3カ月以上保存可能な監視カメラを設け、運行管理者が必要に応じて確認できる体制の整備も求める。

事前届け出は従来通り

 この他、普段面識のないドライバーの点呼も行うことから、運行管理者には前もって対面で会話する機会を設け、健康状態、適正診断結果といった安全に必要な項目を確認することも明記。IT点呼で乗務不可と判断した場合、所属する営業所の運行管理者に連絡して交代のドライバーを手配することや、機器の故障で実施できない場合、別の営業所で対面点呼を実施できる体制を整えておくことも盛り込んだ。
 IT点呼の実施には従来通り、各運輸局への事前届け出が必要。1人当たりの運行管理者がIT点呼を行えるドライバーの数に制限は設けない。
 国交省は年度内にも、運行管理の高度化を議論する有識者検討会で実施要領案を決定し、来年度の早い段階で新制度を開始する方針だ。