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21/06/22

新・総合物流施策大綱、閣議で初の目標値設定

 政府は15日、総合物流施策大綱を閣議決定した。物流を取り巻く環境が急激に変化する中、3本の柱を立て、デジタル化や労働力不足対策、持続可能な物流ネットワークの構築などを実現させる。各施策には目標値を設定し、定期的に政策評価の場で進ちょく管理や検証を行う。
 総合物流施策大綱は、政府の物流施策や行政の指針を示したもの。計画期間は2025年度までの5年間とする。
 1997年に大綱を策定以来、初めて閣議段階で各施策の目標値を定めたことがポイント。従来は閣議決定後に指標を決めており、政府としてより明確に目標を打ち出した。荷主を所管する経済産業省、農林水産省と連携を強化することや、有識者・物流関係者と政策評価の場を設け、施策の進ちょく管理を行うことも大きな変更点となる。
 新たな大綱では今後の方向性として、①簡素で滑らかな物流②担い手に優しい物流③強くてしなやかな物流――の3本柱を提示した。各テーマで掲げる施策を推進することで、新型コロナウイルス終息後を見据えた新たな物流に転換すると同時に、これまで進まなかった構造改革、生産性向上の取り組みを加速する。
 簡素で滑らか物流に関しては、機械化・デジタル化などを通じ、既存業務の改善や働き方改革を実現し、経験やスキルの有無に頼ることなく、ムリ・ムラ・ムダのない円滑な体制を構築する。
 具体的には、25年度までに全ての物流企業に業務の自動化・機械化、デジタル化に向けた取り組みに着手してもらう目標を設定。デジタル化などを通じて、物流のこれまでの在り方を変革する物流DX(デジタルトランスフォーメーション)に関しては、70%の企業での実現を目指す。
 デジタル化を前提とした規制緩和も盛り込み、例えば乗務前後の点呼では、AI(人工知能)などを搭載した点呼機器の認定制度を構築し、認定機器を使う場合に限り、非対面の点呼が行えるようにする。特殊車両通行に関しても、特車が即座にウェブ上で確認した通行可能経路を走行できる新たな制度を創設し、手続きを迅速化をさせる。
 また担い手に優しい物流の実現では、改正貨物自動車運送事業法に基づく施策により、25年までに、ドライバーの年間所得額平均、平均労働時間を全作業平均の水準にする目標を掲げた。労働生産性の改善に向けては共同配送、貨客混載、宅配の再配達削減などを推進し、18年度に時給2569円だった1人が1時間当たりに生み出す付加価値額を、25年度までに2割程度引き上げる。
 この他、強くてしなやかな物流については、有事でも機能を維持できる強じんで、弾力性のある物流ネットワークを構築するため、大企業・中堅企業のBCP(事業継続計画)策定率を引き上げる取り組みを展開。国際競争力強化や、環境負荷提言の目標も定めた。
 これまで大綱のフォローアップは各省庁の局長級を中心に行ってきたが、今後は荷主、物流企業、大学教授などの関係者が参加する場を定期的に開催し、施策の進ちょく管理や検証を行う。