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21/06/17

物流施設、大都市圏外へのニーズの広がりと「次世代型」の追求へ

 長距離輸送を前提にしない配送網の構築へ、物流拠点に求められる立地やスペックが変化していることが、事業用総合不動産サービスのCBREの調査で分かった。
 多くの物流・荷主企業が、サプライチェーンの川上にある生産工場の近接地や大都市圏をつなぐ地域での拠点開設を検討している。また、作業スペースとしての快適性を備え、BCP(事業継続計画)・ESG(企業の社会的責任)に対応する次世代型施設のニーズも高まっている。
 物流・荷主企業が今後の拠点戦略で想定しているエリア・倉庫タイプは「大都市圏に隣接する衛星都市の物流センター」が23%、「出荷側の仕分け倉庫」が21%だった=グラフ1。多くは立地条件に北関東や東北、北陸など大都市圏から外れた地域を挙げており、生産工場の近接地や広域配送を考慮した拠点を検討しているとみられる。
 従来の「都心型物流センター」は20%、「郊外のメガサイズのフルフィルメントセンター」は15%、「ラストマイルの市内配送ステーション」は11%で、大都市圏の拠点ニーズも継続している。
 大都市圏での物流施設拡充が進んだ結果、それ以外の地域で課題が浮上。トラックドライバーの労働条件改善が急務の物流業界で、「長距離輸送を前提としない配送網を本格的に考える段階になったことも背景にある」(CBRE)。
 コロナ禍で急伸したEC(電子商取引)に対応する物流改革は途上で、物流企業が求める拠点の要件は細分化・多様化している。今後需要が増えるとみられる倉庫仕様は「空調付き施設」が66%=グラフ2。物流現場では倉庫内作業の増加にともなう雇用確保が課題となっており、次世代の物流施設には単なる保管場所ではなく作業スペースとしての労働環境が求められている。
 倉庫の仕様ではほかに、自然災害に備える「非常用電源」が65%、環境性能やグリーンビルディングなどの「持続可能な施設」が49%となった。
 同調査は今年3月16日~同26日、「物流施設利用に関するテナント調査」として実施。自社・賃貸を問わず国内で物流施設を利用する239社を対象に、物流企業170社、荷主企業69社の回答をまとめた。

【グラフ1】

【グラフ2】