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21/04/06

国交相の働き掛け、荷主28件に改善求める

国交相による働き掛けの流れ

 国土交通省の秡川直也自動車局長は3月26日の会見で、運送企業の法令違反の原因となる行為をした恐れのある荷主に対し、国交相による働き掛けを28件行ったことを明らかにした。運送企業への配慮を求められた荷主はその後、問題の改善に取り組んでおり、国交省は業界から集めた情報を基に、引き続き取引適正化の対策を進める。
 国交相による働き掛けは2019年7月、貨物自動車運送事業法の改正で創設した制度。24年3月までの時限措置で、運送企業の過労運転防止違反、過積載、速度違反などの原因となる恐れがある行為をした荷主に対し、国交相が働き掛け、法令順守の確保に向けて荷主の配慮が重要なことに理解を求める。違反原因行為を疑うに足りる相当な理由がある場合は要請を出し、それでも改善に応じなければ荷主勧告制度で社名公表する。

対象企業は報告書提出

 秡川局長によると、先月25日までに行った28件の働き掛けのうち、最も多かったのは「長時間の荷待ち」で全体の半分を占めた。次いで「過積載違反につながる依頼」と「非合理的な到着時間の指定」。特にこの業種が多いという特徴はなく、さまざまな業種の荷主が対象になったという。
 28件全ての荷主には運送企業への配慮の重要性を求めた後、国交省に報告書を提出させ、現在は問題を改善できているとする。秡川局長は「荷主の事情はあれど、(現場の問題には)工夫の余地があり、指摘しながら改善を促したい。運送企業も言いづらさはあるだろうが、国交省が秘密を守っていく」とし、情報提供に協力を求めた。

 


~解説~「社名など最低限の情報を」

 長時間の恒常的な荷待ちといった問題行為が疑われる荷主を把握するため、国土交通省が最低限の必要な情報を求めている。運送企業から寄せられる情報の中には社名などがないケースもあり、必要な内容を書き込んでもらうことで、荷主対策につなげたい考えだ。
 問題行為が疑われる荷主の把握に向け、国交省は2019年から、ホームページに専用窓口を設置。情報の提供を呼び掛け、今年3月下旬までに約950件の情報が寄せられた。だが「(中には)愚痴のようなものも含まれ、問題のある内容なのか分からないものも多い。会社名がない場合は、その後のアプローチができない」(貨物課)とする。
 国交相が違反原因行為の疑いのある荷主に働き掛けを行う際、同省は農林水産省、経済産業省と事前に確認をし合うなど連携して動いている。状況は官邸の会議でも報告されており、それだけに運送企業からの正確な情報は重要となる。
 運送企業からすれば、荷主との取引悪化を懸念し、できる限り特定される情報は出したくないというのが本音。だが問題解決には、社名を含め、どこまで情報を提供できるかがポイントになりそうだ。