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21/03/03

国交省飲料・酒物流分科会、今春ガイドライン改定し具体的な改善策追記

 国土交通省は今春、加工食品物流の取引適正化と長時間労働是正策をまとめたガイドライン(指針)を改定する。今年度実施した実証実験の結果を基に、飲料・酒物流で起こる非効率の原因や改善策を盛り込む。銅賞は業界関係者が課題を共有し、対策に取り組む環境を整えることで、ドライバーの労働条件改善につなげたい考え。
 輸送品目別の課題の検討は、ドライバーの長時間労働改善を目指す取り組みの一環。国交省は2018年から、30分以上の荷待ちが多い品目で有識者懇談会を立ち上げ、これまで加工食品、紙・パルプ、建設資材で対策を議論してきた。今年度は同じく荷待ち頻度が高い飲料・酒を対象とし、昨年7月に始まった有識者分科会で課題の洗い出しなどを進めてきた。

 

ノー検品で3時間以上時短

 指針には5つの実証実験の結果を盛り込む。このうちの一つが、卸がメーカーの事前出荷情報を信頼し、数量や外装異常の確認などを一切せずに入荷する「ノー検品」で、実験に参加した卸の拠点では、ドライバーが荷降ろし後、荷ほどき、検品立ち会いなどの作業がなくなったことを確認。導入前と比べ、月3~6時間程度、労働時間を削減できる試算した。卸もバース回転率の向上や、庫内作業員の計画配置につながることを書き込む。 今回は実験のため、参加した卸は入荷後に検品をしていたが、「2週間ほどの移行期間で問題がなければ検品をなくすことは可能」との意見が上がったという。導入前にはメーカーと卸の間で、事前出荷情報のタイミング、欠品処理の対応などを決めていたことから、指針にはルール策定の必要性を明記する。

 

年月表記の必要性盛り込む

 また指針では製造時期を年月日表記から年月表記に変えることで、どのくらい庫内作業効率が上がるかについても記載する。実験では年月日表記の炭酸飲料と、年月表記のアルコールを比較した結果、アルコールの方が先入れ先出し、棚入れ作業のいずれも時間が短縮できることを確認。季節波動、期間限定商品などの条件を考慮せずに試算した場合、全商品を年月日から年月表記に変更すると、庫内の作業時間を年130時間ほど短縮できることを盛り込む。
 指針ではこの他、飲料・酒を配送するドライバーが、小売店・飲食店でどんな付帯作業を行っているかの見える化や、メーカーと卸がそれぞれ手配する車両を相互活用することによる稼働率の改善効果なども説明する。
 国交省は2月24日の有識者分科会で、指針案を示し、委員からおおむね了承を得た。4月をめどに公表する考えで、その後は業界団体への配布や、セミナーなどを通じて内容を周知し、荷主と運送企業の取引適正化の取り組みを広げる。