• 行政・業界団体

21/01/19

置き配の盗難、トラブル対処に国が独自約款呼び掛け

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、注目が高まる宅配便の置き配。玄関先などに荷物を置くため、盗難被害が課題となる中、国は運送企業がトラブルに対応できるよう、防犯対策、免責などを明記した独自の宅配便運送約款を認可する体制を整え、置き配に関し約款が未整備の企業に対応を呼び掛けている。一方、一部通販企業も盗難防止の啓発を図っているが、被害を防ぐ抜本的な対策は見いだせていない。
 国土交通省によると、昨年10月の宅配便の再配達率は前年同月比3・6ポイント減の11・4%。新型コロナに伴うインターネット通販の需要増で、宅配各社の取扱個数が前年より10~20%増加する中、在宅率の高さに加え、置き配の普及も再配達減少の一因に挙げられている。
 だが、置き配では盗難被害の一つだ。実際に東京、愛知などでは玄関先に置かれた荷物を盗まれる被害が発生。国民生活センターにも被害の相談が寄せられている。

対策など明記もしもに備え

 そこで国交省は昨年、置き配の盗難対策に動いた。ヤマト運輸が国に提出した独自約款をベースに、置き場所の範囲、防犯・防火対策、免責などを明記した約款を認可できるよう体制を整備。約款を通じ、通販企業とサービス利用者に注意を促すことで、トラブル発生時に、運送企業を守ることが狙いだ。
 「従来は宅配各社に対策を任せていたが、感染症の流行で、置き配や類似サービスが広がっている。宅配を手掛ける企業は独自約款の変更認可を受けてほしい」と国交省。ただ企業には、約款変更による対策がまだ認知されておらず、今後は周知を徹底する方針だ。

明確な発生件数は不明

 一方、置き配の盗難では抜本的な対策を見いだせていない課題も残る。そもそも置き配の盗難は、置き引き、自動販売機荒らしなどと同じ類型で扱われることから、「明確な件数を把握できていない」と警視庁や愛知県警。現状では宅配ボックスの活用、人目に触れない場所や防犯カメラに映る場所への指定、自治会と協力した見回りぐらいしか対策がないとする。
 通販では、アマゾンジャパンが宅配ボックス活用をはじめ簡単な防犯対策をブログで紹介し、啓発活動を行っているが、他の企業ではほとんど動きが見られない状態。盗難時はほとんどが返品・返金で対応しており、楽天ではサイトの利用規約で、「配達完了後の紛失、盗難、破損などは責任を負わない」と明記し利用者に同意を求めている。
 非対面・非接触で荷物を受け取れる手法として注目を集める置き配。新型コロナ終息後も普及させるには、安全・安心に利用できる環境の整備が不可欠。そのためには被害の実態を把握すると同時に、盗難後の対策だけでなく、被害を防ぐ方法を官民で改めて検討する必要がありそうだ。